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老朽化は立ち退きの正当事由になる?賃貸トラブルにしないポイントも解説!

はじめに、「老朽化は立ち退きの正当事由になる?」という問いの回答から。

賃貸物件の老朽化による建て替えは、立退き請求の正当事由になります。

ただし一部、正当事由と認められないケースもあるので注意しましょう(詳しくは本文で解説)。

合わせて、立ち退き請求をトラブルにしないポイントについても解説します。

老朽化による建て替えが、立ち退きの正当事由になる理由

はじめに、老朽化による建て替えが、オーナー側からの賃貸借契約の解約申し入れ(=立ち退き請求が可能)の正当事由になる理由を確認しましょう。

老朽化による建て替えは、借地借家法の正当事由にあてはまる

賃貸物件の入居者は、借地借家法で手厚く守られています。

そのため、オーナーが立退き請求をできるのは、正当事由(正当な根拠・理由)があるときに限定されます。

正当事由の概要については、借地借家法に記されています。
その内容を分かりやすくまとめると以下のようになります

・建物の使用を必要とする事情(例:オーナーが住む必然性がある、老朽化による建て替えが必要)
・賃貸借に関する従前の経過(例:信頼関係を壊す賃料の不払いがあるか)
・建物の利用状況・現況(例:入居者が建物を住居として利用しているか)
・建物の賃借人に対して財産上の給付(例:十分な立ち退き料があるか)

参考:借地借家法 第28条「建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件
*()部分の例は、編集部で追加した内容

建物の老朽化による建て替えは、上記のうち「建物の使用を必要とする事情」に当てはまります。

つまり、賃貸物件の老朽化による建て替えは「立退き請求の正当事由になる」ということになります。

老朽化していても正当事由として認められないケースもある

実際に裁判の判例を見ても、建物の老朽化が立退き請求の正当事由として認められているケースが目立ちます。

といっても、建物の老朽化を理由とした立ち退き請求がすべて認められているわけではありません。

なかには、築57年を経過した賃貸物件でも、正当事由が認められなかったケースもあります。

この判例では正当事由が否定され、老朽化を理由とした建て替えの必要性が認められないとされました(令和元年12月12日/東京地裁の判例)。
参考:不動産適正取引推進機構「建物賃貸借に関する紛争

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正当事由を補完する立ち退き料も必須となる

注意したいのは、正当事由が見込まれる事案だからといって、必ずしも立ち退き請求が認められるわけではないことです。

裁判では、賃貸借契約の解約申し入れが認められやすい内容でも、入居者への「十分な立退料の支払い」をもって正当事由が認められています。

そのため、調停や裁判に発展しない場合でも、建て替えが理由の立ち退き請求では、正当事由の補完として立ち退き料を支払うのが一般的です。

立退料にはお詫び料の意味合いがあると共に、入居者の経済的な損失をカバーする役割があります。

立ち退き料の相場は「賃料の6カ月程度から」と解説されることが多いですが、これはあくまでも目安で実際はケースバイケースです。

建物の老朽化による立ち退きでも、完了までに期間を要する

注意したいのは、たとえ交渉がスムーズに進んだとしても、立ち退きの完了にはかなりの期間を要するということです。

老朽化による建て替えという正当事由が認められやすい事案であり、なおかつ、立ち退き料を支払ったとしても、入居者にすぐの立ち退きを要求することはできません。

借地借家法に基づくと、賃貸オーナー(賃貸人)からの解約申し入れは、6カ月前までにしなければならないと規定されています。
参考:借地借家法 第27条「解約による建物賃貸借の終了

建物の老朽化による立ち退き請求は、立ち退き料を支払ったり、解約までに期間がかかったりするなど、オーナーの金銭的かつ精神的な負担がかなり大きいです。

こういった負担を回避したいオーナーは、賃貸物件を売却するという選択もあります。

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老朽化による立ち退き請求をトラブルにしないポイント

老朽化による立ち退き交渉をトラブルに発展させないためには、入居者の立場になって「誠実に対応していくこと」が重要です。

もし、オーナーがご自身で交渉されるなら、高圧的、一方的な態度だけは避けましょう。

入居者の反発を招き、深刻なトラブルに発展する可能性もあります。

これに加えて、老朽化による立ち退き請求を進めるにあたって、抑えておきたい3つのポイントは次の通りです。

・状況に合わせて立ち退き料を設定する
・早いタイミングから交渉を始める
・入居者が退去できない理由を解消する

それぞれのポイントの内容を確認していきましょう。

ポイント1.状況に合わせて立ち退き料を設定する

立ち退き料の相場は、「賃料の3〜6カ月分」あるいは「賃料の6カ月程度から」と言われます。

ただし、これは「建物が老朽化して、今にも倒壊する危険性が高い」など、強固な正当事由がある場合の立ち退き料の相場です。

老朽化しているといっても、「築年数が数十年程度しか経っていない」「専門家から見たときに危険性が少ない」といった正当事由がない(または正当事由が弱い)と見込まれるケースでは、入居者が立ち退き交渉に応じず裁判に発展したとき、立ち退き請求を否定される可能性があります。

こういったケースでは、相場よりも高い立退料を用意したり、立ち退き請求に強い弁護士に依頼したりするなど、より慎重に交渉を進めていく必要があります。

ポイント2.早いタイミングから交渉を始める

前述のように、賃貸オーナーからの解約申し入れは「6カ月前まで」にする必要があります。

だからといって、入居者に立ち退いてほしい6カ月前から交渉を始めればよい、というわけではありません。

なぜなら、立ち退きを要求する期間が短くなるほど、立ち退き料が高くなる傾向があるからです。

立退料をなるべく抑えたいなら、たとえば「8〜9カ月前」「1年前」など早いタイミングから交渉を始めるのが得策です。

また、建物の老朽化が理由の立ち退き請求では、物件に居住していることで入居者の生命が危険にさらされています。

入居者の安全を確保するためにも、少しでも早めのタイミングで交渉を始めるのがよいでしょう。

ポイント3.入居者が立ち退きを拒否する理由を解消する

立ち退き交渉をした結果、それを拒否する入居者がいる場合は、その理由をしっかりヒアリングして解消するよう努めましょう。

一例では、入居者がご高齢で引っ越し先を見つけるのに不安がある場合は、ご高齢でも入居可能な物件をご紹介したり、現在の物件に近い公的住宅を探したりすることで不安を解消することが可能です。

あるいは、唐突に立ち退き請求をされたことで、警戒していることが拒否する原因かもしれません。

その場合は、老朽化した建物に住み続けることの危険性について、丁寧に説明するだけで反応が変わる可能性もあります。

立ち退き請求を弁護士に依頼する場合は、高額な費用がネック

立ち退き請求は、深刻な賃貸トラブルに発展しやすいテーマのひとつです。

オーナーご自身で立ち退き請求を行う場合は、ここで解説したポイントを意識しながら、慎重に交渉していきましょう。

また、トラブルになることを回避したいなら、立ち退き請求に強い弁護士に依頼するのが賢明です。

ただし、高額な弁護士費用がかかるというデメリットがある点に注意しましょう。

「立ち退きの交渉が面倒」だからといって、「弁護士費用をかけたくない」というオーナーは売却を視野に入れてもよいかもしれません。

相談するなら、老朽化している築古アパートも扱っているワケあり物件専門の不動産会社がおすすめです。

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