賃料値上げの通知時期のベストなタイミングは?値上げを実現するポイントも紹介!
インフレ傾向が強まるなか「賃料値上げをしたいが、通知時期をいつにしたらよいか」というお悩みを持つ賃貸オーナーも多いのではないでしょうか。
ここでは、賃料値上げの基礎知識・通知時期・実現するためのポイントなどについて分かりやすく解説します。
本稿を最後までお読みになることで、今後、賃貸オーナーとして「どう判断し、何をしていくべきか」が明確になります。
通知時期を考える前に!賃料値上げの基礎知識
端的にいうと、賃料値上げは簡単なことではありません。
たとえば、入居者に対して「1カ月後から賃料を1万円値上げする」と一方的に通知しても、相手方がこれに応じる義務はありません。
それどころか、賃料値上げを強引にしようとすると、賃貸トラブルに発展したり、空室率が高まったりするリスクがあります。
このような事態にならないよう、まずは賃料値上げについての基礎知識について学びましょう。
基礎知識1.賃料値上げをするには正当事由が必要
賃料の値上げについては、「正当事由(せいとうじゆう)」が必要となります。
正当事由とは、今回のケースでいえば賃料値上げをする正当な理由・根拠のことです。
賃料値上げの正当事由については、借地借家法32条(借賃増減請求権)1項で次のように例示されています。
ただし、上記の内容はあくまでも一例と考えられますので、ほかの事情でも「賃料値上げの正当事由になる」と調停や裁判所で認める可能性もあります。
基礎知識2.賃料値上げは入居者との合意が前提となる
上記のような正当事由があると考えられる場合でも、賃料値上げを実行するには入居者の合意が前提になります。
つまり、賃貸オーナーが賃料値上げの通知を一方的に送っても、入居者はそれに従う義務がないということです。
賃料値上げについて入居者と合意に至らない場合、まずは調停で話し合い、それでも決着しない場合は裁判によって争うことになります。
なお、賃料の値上げ(または値下げ)に関して法的な手続きをとる際は、裁判を提起する前に調停の申し立てを必ずしなければなりません(調停前置主義)。
基礎知識3.賃料値上げをすることで空室リスクが高まる
賃貸経営の観点からいうと、賃料値上げをすることで退去する入居者が増えて、空室リスクが高まる恐れがあります。
これはとくにエリア内の空室率が高まっている地方や郊外の物件は要注意です。
競合物件よりも賃料が高くなってしまえば、そちらの物件に入居者が流れてしまいます。
たとえ賃料の値上げに成功したとしても、空室率が高まって物件全体の収入自体が減ってしまえば元も子もありません。
基礎知識 4. 賃料値上げを拒否されたら売却するのも手
入居者に賃料値上げを拒否された場合、売却したほうがよい物件もあります。
とくに以下の条件にあてはまる物件は売却をおすすめします。
賃料値上げの通知時期は、2〜3カ月前が望ましい
ここまでお話ししてきた「賃料値上げの基礎知識」を踏まえた上で、次に、賃料値上げの通知時期について考えてみましょう。
賃料値上げの通知時期について借地借家法など、法律による決まりはありません。
ただし、入居者が「賃料値上げに応じるか、応じずに退去するか」を検討する相当期間は必要と考えられます。
相当期間がどれくらいかについてはケースバイケースですが、入居者の立場で考えると、2〜3カ月前に賃料値上げの通知をするのがよいのではないでしょうか。
一般的に、賃貸借契約における入居者の解約予告期間は「1カ月前」です。
通知時期が賃料値上げの2〜3カ月前であれば、解約予告期間まで余裕があり、十分に検討できます。
トラブルを回避しつつ、賃料値上げを実現するためのポイント
賃料の値上げを実現するためには、入居者に対して「丁寧に粘り強く」という姿勢を貫き通すことが重要です。
合わせて、入居者の立場になって、賃料値上げを受け入れやすい流れをつくることも欠かせません。
具体的に、トラブルを回避しつつ、賃料値上げを実現するためのポイントとして次の6つが挙げられます。
なお、以下のポイントを実行してもトラブルに発展する可能性もゼロではありません。
トラブルになったら売却するのも一案です。
ポイント1.強引な賃料値上げは絶対しない
賃料値上げの交渉が難航する場合でも、入居者に対して強引に合意を迫るのは絶対にやめましょう。
賃料値上げの合意に至らないときの解決策は、調停や裁判以外にありません。
もし、高圧的な態度をとって無理に同意を迫れば、損害賠償責任や刑事罰の対象になる可能性もあります。
ポイント2.正当事由に基づく値上げであることを伝える
賃料値上げを入居者に通知する場合は、それが正当事由に基づく値上げであることをしっかり伝える必要があります(正当事由の例については本稿の冒頭参照)。
正当事由を明確にすることで、入居者が賃料値上げに納得しやすくなり、また、調停になる場合も今回の値上げが正当事由に基づくものであることを示せます。
ポイント3.正当事由の根拠となるデータを示す
賃料値上げの通知においては、正当事由に加えて「その根拠となるデータ」を示せるのが理想です。
たとえば、賃貸物件の固定資産税が増えたことが賃料値上げの理由であれば、直近3〜10年間などの固定資産税証明書をもとにした資料や、証明書のコピーが根拠となるデータになります。
また、「競合物件よりも賃料が安すぎること」が賃料値上げの理由なら、賃貸情報サイトをリサーチして作成した資料などが根拠となるデータになり得ます。
ポイント4.賃料値上げと入居者のメリットをセットにする
賃料値上げと入居者がメリットを感じる施策をセットにすることで、合意を得やすくする方法もあります。
一例では、賃料値上げを機械的に通知すると「負担が重くなるのは応じられない」と感じる入居者がいたとしましょう。
しかし、今回の賃料値上げが無料の高速Wi-Fi導入とセットであることを通知すれば、同じ入居者でも「Wi-Fiが自由に使えるなら仕方ないか」という気持ちになりやすいです。
このほか、賃料値上げとセットにしやすい住宅設備としては、「宅配ボックス」「共用部の防犯カメラ」「オートロック」などが考えられます。
ポイント5.オーナーが直接訪ねてお願いする
賃料値上げを文書で通知するケースもありますが、スムーズに話をまとめるためにはオーナーが入居者ひとりひとりを直接訪ねてお願いするのが効果的です。
その際には以下のような事柄を丁寧に説明するのがよいでしょう。
ポイント6.小幅な賃料値上げにする
入居者の立場で考えると、大幅な賃料値上げよりも、小幅な賃料値上げのほうが受け入れやすいです。
一例では、もともとの賃料が月額7万円だとして、1万円の値上げと(賃料8万円)3,000円の値上げ(7万3,000円)では印象が大きく変わります。
賃貸オーナーの立場で考えると、「小幅な賃料値上げでは、物価上昇を吸収できない」とのご意見もあるかもしれません。
しかし、入居者の受け入れやすさを重視するなら、物価上昇率に合わせて、数年おきに小幅な賃料値上げを繰り返すのも手です。
「物価上昇=賃料値上げ」と機械的に考えるのはリスクあり
ここでは、賃料値上げの通知時期のベストなタイミング、値上げを実現するポイントを解説しました。
最後に、賃貸オーナーの皆様にお伝えしたいことがあります。
この記事の冒頭でも触れましたが、賃料の値上げは空室率を高めるリスクがあります。
「物価や金利が上がったから賃料値上げをする」と機械的に考えるのは危険です。
賃料値上げをしても「入居者に選ばれ続ける物件か」を客観的に見極め、適切な賃料を設定しましょう。
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