負動産とはどのような不動産?どんなデメリットがあるの?
不動産ならぬ、「負動産(ふどうさん)」が国内で急増しています。
負動産とはどのようなものか、負動産を所有したときのデメリットは何かなどについて、詳しく解説します。
負動産とはどのような不動産?
負動産とは、居住や賃貸などで使われていないにもかかわらず、維持コストがかさみ続ける不動産のことです。
身近なところでは、実家を相続したところ、買い手や借り手が見つからず、出費がかさみ家計を圧迫するケースがあります。
このほか、別荘・投資物件・代々受け継いできた田畑・山林などが負動産になることもあります。
相続して初めて負動産だった…と気づく人も多いようです。
例えば、空き家を受け継いだところ、予想以上の維持コストがかかり、慌てて売却や賃貸を模索したものの、打開策が見つからないといった具合です。
増え続ける負動産が社会問題化している
日本全体で考えても、負動産は由々しき問題となっています。
空き家・空き地ともにハイペースで増え続け、社会問題化しているのです。
まず、空き家数を確認してみましょう。総務省が5年ごとに行っている「住宅・土地統計調査(2018年)」では、全国の空き家数は約849万戸。
住宅総数に占める割合は約14%に達しています。
1998年段階の空き家数は576万戸でしたから、10年間で273万戸も増加しています。
▽空き家および空き家率の推移-全国(1958年〜2018年)
画像引用:総務省「住宅・土地統計調査(2018年)」
次に、空き地の面積を確認してみましょう。
国土交通省の資料「増加する空き地の現状について」によると、空き地の面積は、2008年の段階で632㎢でしたが2018年には1,364㎢と2倍以上に増加しています(世帯の保有する空き家ベース換算)
増え続ける負動産に対応するため国は、倒壊する危険性のある空き家の固定資産税の住宅用地特例を解除する制度を設けたり(特定空き家)、相続した不要な土地を引き取る制度(相続土地国庫帰属制度)を設けたりしています。
負動産を相続したときのデメリットと対策
負動産を所有し続けていると数多くのデメリットがあり、放置しているとリスクがあります。
負動産のデメリット1:維持コスト/固定資産税がかかる
負動産を所有していると、様々な維持コストがかかります。
固定資産税は人が住んでいるか住んでいないかに関わらず、毎年課税されるものです。
また、空き家であれば光熱費・水道料金がかからないと考える人もいますが、電気や水道を止めてしまうと清掃や手入れがしにくくなり、物件の傷みが早まりやすいので注意しましょう。
加えて、戸建てや空き地は、庭木のせん定や敷地の草刈りなど屋外の維持コストも必要です。
庭や敷地が荒れると、人目につきやすいため、苦情やトラブルに発展することもあります。
【対策】
維持コストや固定資産税をなくすには、負動産を処分するしかありません。
処分方法についてはいくつか選択肢がありますが、詳細は後ほど解説します。
負動産のデメリット2:管理費/修繕積立金がかかる
不動産がマンションの場合、管理費や修繕積立金を毎月納める必要があります。
築古マンションだと、管理費や修繕積立金が上がっていくケースもあります。
【対策】
最近は賃貸リノベーションが人気です。賃貸需要が見込めるエリアであれば、リノベーションを行って入居者付けをする手もあります。
負動産のデメリット3:火災リスクがある
空き家の負動産は防犯性が低いことから、放火の被害に遭う可能性が高いといえます。
また、漏電が原因で火災が発生することもあります。
そして、空き家から出火した場合は、誰も住んでいない分、気づくのが遅くなり、隣家に燃え広がるケースも目立ちます。
これらを踏まえると、火災保険に加入した方が安心ですが、空き家の火災保険料は居住している住宅に比べて割高な傾向があります。
【対策】
各社の火災保険を比較して、補償と保険料のバランスのよい保険商品を選択しましょう。
注意したいのは、空き家で加入できる保険商品はごく一部ということです。
また、空き家であることを保険会社に知らせずに火災保険に加入していても、いざ火災が起きたときに保険金が支払われない可能性もあります。
空き家でも加入できる火災保険を選択することが大事です。
負動産のデメリット4:倒壊や落雪リスクがある
「10年に1度の大雪」「平年の3倍の積雪量」など国内で記録的な大雪が増えています。
空き家の負動産のなかには構造物の傷みが激しく、雪の重みで倒壊する物件も見られます。
物件が倒壊してしまえば後始末に負われたり、隣家に被害があれば損害賠償を負わされたりする可能性もあります。
【対策】
負動産の近隣の業者に、雪下ろしや除雪を定期的に依頼する必要があります。
遠方に住んでいて雪下ろし業者の連絡先がわからない場合は、自治体に相談してみましょう。
登録業者を紹介してくれることもあります。
負動産のデメリット5:「特定空き家」に指定される可能性がある
空き家となった負動産が「倒壊の恐れあり」と市区町村に判断されると、「特定空き家」に指定されます。
これにより住宅用地特例の対象から除外されると、固定資産税が数倍に増えてしまいます。
【対策】
近隣住民から苦情や自治体の調査を受けないためには、空き家のあるエリアで活動する不動産会社・管理会社・ 空き家管理を行うNPOなどに管理を委託する必要があります。
さらに今後、「管理不全空き家」に指定されるデメリットも
これらに加えて、今後「管理不全空き家」に指定される可能性があるというデメリットも 追加されそうです。
先にお話したように、空き家となった負動産が「特定空き家」に指定されると住宅用地特例の対象から除外され、固定資産税の負担増になります。
「管理不全空き家」はこの「特定空き家」の範囲をより広げて、負動産所有者が管理を怠った段階で、住宅用地特例を解除するというものです。
具体的には、以下のような要件にあてはまると、「管理不全空き家」に指定される可能性があります。
▽「管理不全空き家」の要件の例
・適切に管理されていない
・倒壊の可能性は低いが一部に破損や変形などがある
・放置すれば「特定空き家」になる可能性がある
引用: 日本経済新聞 2023年4月22日付
「管理不全空き家」は、空き家対策特別措置法改正案が国会審議を通過すれば、2023年内にも施行する見通しとなっています。
負動産を処分する方法は?
負動産を所有していると、維持コストや固定資産税がかかり続けます。
この負担をなくすには、不動産を処分するしかありませんが、下記のような選択肢があります。
1.仲介で売却する
不動産仲介会社に買い手を探してもらい、折り合いがつけば売買契約を交わします。とはいえ、負動産の場合、価格を極端に下げても買い手が見つからないケースも多いです。
2.買い取り業者に売却する
空き家や空き地を扱う、買い取り業者に売却する手もあります。
ただし、資産価値や市場価値のない不動産だと断られるケースがほとんどです。
3.相続土地国庫帰属制度を利用する
この制度は、相続等により取得した不要な土地を国が引き取ってくれる制度です。
「対象は土地のみ」「数多くの要件がある」「審査手数料がかかる(土地一筆当たり14,000円)」「負担金がかかる(20万円~)」などの条件があります。
この制度について詳しく知りたい人は、下記のコラムをご参照ください。
【合わせて読む】
相続土地国庫帰属制度とは?この制度のメリットは?
4.有料の引き取り業者に依頼する
売却や上記制度の利用が難しい負動産は、有料の引き取り業者に処分をお願いするのがよいでしょう。
当社でも、不動産を有料で引き取るサービス「不動産有料引き取りSOS」をご用意しております。
不動産の処分にお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。
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