マンション共用部分の飛び降り自殺物件は告知義務が必要?賠償金も含めて解説
マンションの部屋で自殺があった場合、買主や借主に対して告知義務があります。
しかし、共有部分で飛び降り自殺があった場合、告知義務はあるのでしょうか。
結論から申し上げると、共有部分の飛び降り自殺でも正直に告知するのが無難です。
その詳細に加えて、自殺者のご遺族に賠償金を求めることが可能なのかなどについて、わかりやすく解説します。
※事故物件の告知義務が必要かどうかは、最終的にケースバイケースで判断されます。
本稿の内容はあくまでも参考情報としてお役立てください。
マンション共用部分の飛び降り自殺でも、告知するのがおすすめ
自殺・殺人事件・孤独死(長期間発見されない場合)などの履歴がある物件を売ったり貸したりする場合、売主・貸主には告知義務があります。
告知義務とは、買主・借主に事故物件であることを明らかにし、事故の状況を説明することです。
ネット上では「マンションの共有部分からの飛び降り自殺は告知義務がない」と解説する記事も見られます。
しかし、このような意見を鵜呑みにするのは危険です。
以下の3つの理由を考えると、正直に告知することをおすすめします。
理由1:ガイドラインに記載されていないから
マンション共用部分の飛び降り自殺は、専有部分(居室など)の自殺に比べて「買主・借主の心理的抵抗感が少ない」と一般的に考えられています。
だからといって、「告知義務をしなくてもいい」と言い切ることはできません。
▽参考:共用部分と専有部分の詳細
共用部分 | 法定共用部分 | 共用廊下、共用階段、エレベーター、屋上など |
---|---|---|
規約共用部分 | 管理人室、集会室、共用施設など | |
専有部分 | 居室、これに附属する設備 |
※各居室のバルコニーや窓も共用部分になる
なぜなら、不動産業界で告知義務を判断する目安となっている国土交通省のガイドラインを見ても、「共有部分の自殺は告知しなくてもよい」といった類の記載は見られないからです。
なお、同ガイドラインでは、例えば「一般的な自然死であれば告知しなくてもよい」「賃貸の場合はおおむね3年が目安となる」などの目安が提示されています。
参照:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(外部リンク)
理由2:告知が必要かはケースバイケースだから
前出の国土交通省のガイドラインに基づくと、事故物件の告知はケースバイケースで判断すべき事柄です。
具体的には「(人の死が)取引の判断にどの程度の影響を及ぼすかについては、当事者ごとに異なる」と解説しています。
実際に、事故物件の告知義務に関する裁判例では、自殺からほぼ同じ年数が経過している物件でも、微妙な状況の違いにより契約解除が「認められた判例」と「認められなかった判例」があります。
理由3:訴訟されたときのダメージが大きいから
飛び降り自殺があった物件で告知義務を果たさないと、買主・借主から民法の契約不適合責任を追及される可能性があります。
これにより、以下のような権利を行使されるリスクがあります。
買主・貸主が有する権利 | 内容 |
---|---|
履行追完請求 | 補修や代替物を求められる |
代金減額請求 | 契約金額から金額の引き下げを求められる |
損害賠償請求 | 損害に応じた賠償を求められる |
契約解除 | 契約そのものをなかったことにできる |
契約不適合責任について詳しく知りたい人は、下記の関連記事もご参照ください。
とくにマンションを売却する際に「事故物件の告知をしないこと」は大きなリスクになりますのでご注意ください。
過去の裁判例では、飛び降り自殺があった一棟マンションを告知義務なしで売却したことで、損害賠償2,500万円(物件購入価格1億7,500万円)が命じられたケースもあります。
参照:RETIO判例検索システム「東京地裁 平20・4・28」(外部リンク)
マンションの飛び降り自殺が売却価格に及ぼす影響は?
一般的に、マンションの共有部分で飛び降り自殺があった場合、売却価格への影響は少ないといわれます(とくに区分マンションは価格への影響は限定的なケースが多いようです)。
一方で、専有部分の自殺は売却価格への影響が大きいです。
相場よりも20〜30%程度も値下がりするのが一般的です。
ただし、これはあくまでも一般論ですので、共有部分での飛び降り自殺がどれくらい価格に影響するかは、実際に取引をしてみないとわからない面があります。
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マンション共有部分の飛び降り自殺、ご遺族へ賠償金を求められる?
マンション共有部分で飛び降り自殺があった場合、ご家族へ損害賠償請求できるかは、「所有しているのが一棟物件か、区分マンションか」で状況が変わってきます。
弁護士ドットコムの複数の相談・回答を参考にまとめました。
一棟物件の場合:損害額を証明できれば請求できる可能性がある
マンション共有部分で飛び降り自殺が発生した場合、所有しているのが一棟物件であれば、以下の損害額を自殺者のご家族(以下、ご遺族)に請求できる可能性があります。
1.物件の価値(売却価格)が低下した分
2.家賃が通常よりも下がった分
3.自殺後の清掃費用
4.お祓い料 など
注意点としては、裁判所に上記1や2の支払い命令を出してもらうには、物件の価値や家賃が下がったことをオーナー自身が証明する必要があるでしょう(例:取引相場と当該取引相場の比較など)。
なお、これらご遺族への請求額は、それぞれの法定相続分に応じた金額になります。
ただし、同種の事故では、ご遺族が高額な損害賠償請求をされるリスクがあるため、相続放棄をするケースも多いようです。
この場合、相続放棄を行ったご遺族に対して、損害賠償請求ができなくなります。
区分マンションの場合:損害を証明するのは現実的に難しい
所有しているのが区分マンションであれば、ご遺族に損害賠償請求をするのは慎重になったほうがよいでしょう。
この記事でテーマにしている「共有部分での飛び降り自殺」に限定すると、「事故が個別の区分マンションの価値を低下させたこと」を証明するのは難しいと考えられるからです。
自殺による実害・手間・費用を考えると早めの売却も
ここでお話してきたように、マンション共有部分での飛び降り自殺は、売買・賃貸問わず、告知義務が必要です。
飛び降り自殺の影響がとくに大きいのは一棟物件です。
一棟物件のオーナーは、ご遺族に損害賠償請求をすることが可能です。
とはいえ、支払い命令を出してもらうには、自殺によって物件の価値が下がったことを証明しなければなりません。
こういったマンション共有部分での飛び降り自殺による実害・手間・費用などを考えると、今後の対処策を専門家に相談したり、早めに売却したりすることを考えてみるのも一案です。
相談や売却などをご希望の場合は、株式会社EINZ(アインズ)までお気軽にお問い合わせください。
私たちは「訳あり物件」を専門にする不動産会社です。自殺物件を所有する方々に以下のような個別提案ができます。
- 自殺物件の価値下落についての個別アドバイス
- 今後、どのような対処が最善なのかのご提案
- 自殺物件をなるべく高く売る方法のご提案
お問い合わせの際は、お手数ですが「事故物件に関連するご相談であること」「ご希望される提案内容や物件概要」などをお知らせいただけますと、よりスムーズに対応できます。
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